ボーナスなしの家計管理について「まわりはボーナスで旅行や買い替えをしているのに、うちは賞与がないから毎月ギリギリ」とのご相談をよくいただきます。
年俸制の会社・賞与制度のない中小企業・自営業やフリーランスの方など、月収だけで1年を回している世帯は多いです。
ボーナスなしの家計が苦しく感じるのは、やりくりが下手だからではありません。
原因は多くの場合、賞与がある家計と同じ感覚で「毎月の給料=毎月使えるお金」と考えてしまうことです。
考え方を整えるだけで、家計の見通しはガラリと変わります。
私は銀行員時代から独立後まで、延べ1,000件以上の家計相談・面談を担当してきた元銀行員FPです。
家計相談の現場で「賞与がないから貯められない」とおっしゃっていた方もいらっしゃいます。
お金の置き場所と順番を変えただけで、年間で数十万円を残せるようになったケースも何度も見ています。
本記事ではボーナスなしの家計管理を「年間手取りを12で割る」考え方から組み立てていきましょう。
特別な支出と将来のお金を毎月積み上げて、自分でボーナスをつくる手順を具体的な金額例とともに解説します。
読み終えたときには今月から動かせる順番がはっきりしているはずです。

この記事でわかること
- ボーナスなしの家計が苦しく感じる仕組みと構造の違い
- 「毎月本当に使えるお金」を年間手取りから出す手順
- 自分ボーナスの積立設計と口座の分け方・注意事項
ボーナスなしの家計管理が難しく感じる理由

まずはボーナスなしの家計が苦しく感じる理由を整理します。
理由を理解しておくと、後の手順の意味がすっと頭に入るでしょう。
「月給12ヶ月分」と「月給16ヶ月分」の違い
賞与が年2回・合計で月給4ヶ月分ほど出る会社の場合、年収は月給の16ヶ月分になります。
一方、ボーナスなしの場合は12ヶ月分です。
同じ年収であれば、ボーナスなしの世帯は毎月の入金額が多くなります。
例えば年間の手取りが264万円の世帯で考えてみましょう。
金額はあくまで一例です。
ボーナスなしであれば毎月の手取りは22万円です。
同じ年間手取りで賞与が4ヶ月分ある世帯であれば、毎月は16万5,000円、賞与で年間66万円を受け取ります。
ボーナスなしの世帯で注意したいのは、毎月の22万円のうち5万5,000円が本来は「まとめて受け取るはずだったお金」にあたることです。
5万5,000円を毎月の生活費として使ってしまうと、年間で66万円分の余裕が消えてしまう計算です。
年払いの支出が毎月の収入を直撃する
もう1つの理由として、年に数回しか発生しない支出の受け止め方があります。
自動車保険・税金・車検・帰省や旅行・家電の買い替え・冠婚葬祭などは、毎月発生しないかわりに一度の金額が高くなります。
賞与がある世帯は年払いの支出を賞与でまとめて払う設計にしていることが多いです。
ボーナスなしの世帯には賞与の原資がないため、発生した月の生活費を圧迫します。
結果として「毎月きちんとやりくりしているのに貯まらない」状態に陥りがちです。
逆にいえば、ボーナスなしの家計管理は「まとめて入るお金がない」のではありません。
「まとめて入るお金を自分で積み立てる仕組みがまだない」だけです。
次章から、積み立ての仕組みをつくっていきましょう。
ボーナスなしの家計管理は年間手取りを12で割ることから始める

ボーナスなしの家計管理で最初にやることは、家計簿の書き方を変えることではありません。
年単位で収入をとらえ直すことです。
手順1:年間の手取り収入を出す
直近の給与明細から、社会保険料と税金が引かれた後の手取り額を確認し、12倍します。
残業代や手当で月々の差が大きい場合は、少なめの月を基準にすると安全です。
副業や配偶者の収入がある場合は、世帯の合計で考えてください。
「年間手取り」が1年間に使える・貯められるお金の全体像になります。
ボーナスなしの家計は月単位だけだと全体が見えにくいため、まず年の数字を手元に置くことがスタートです。
手順2:賞与相当分がいくらかを計算する
次に、年間手取りを16で割ってみましょう。
16で割った金額は「もし賞与が4ヶ月分あったら、毎月はいくらで暮らす想定になるか」の目安です。
先ほどの例(年間手取り264万円)で計算すると、次のようになります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 年間手取り | 2,640,000円 |
| 年間手取り÷16(賞与ありの場合の月額目安) | 165,000円 |
| 毎月の手取り(ボーナスなしの場合) | 220,000円 |
| 差額(毎月の賞与相当分) | 55,000円 |
| 差額の年間合計 | 660,000円 |
毎月22万円のうち5万5,000円が賞与相当分で、年間では66万円になります。
金額はあくまで一例です。
ご家庭の手取りに置き換えて計算してください。
5万5,000円を生活費と混ぜないことが、ボーナスなしの家計管理の核心です。
金額の大小ではなく、「毎月の入金には性質の違うお金が混ざっている」と気づくことに意味があります。
自分ボーナスを毎月つくるボーナスなし家計の積立設計

賞与相当分が見えたら、使い道を先に決めます。
以下ではまとまった支出に備えるお金と将来のためのお金に分ける方法を紹介しましょう。
特別な支出の年間予算を出して月割りにする
まず、年に数回しか発生しない支出を1年分書き出します。
書き出す時期は家計簿を見返せる年末年始や年度替わりがおすすめですが、思い立ったタイミングで構いません。
| 項目 | 年間の金額 |
|---|---|
| 自動車関係(保険・税金・車検の年平均) | 130,000円 |
| 帰省・旅行 | 100,000円 |
| 家電・家具の買い替え積立 | 60,000円 |
| 医療費・被服費・美容 | 50,000円 |
| 冠婚葬祭・お年玉・プレゼント | 40,000円 |
| 各種年会費・受信料など | 40,000円 |
| 合計 | 420,000円 |
| 月割り(合計÷12) | 35,000円 |
上の例では年間42万円、月割りで3万5,000円になります。
金額はあくまで一例です。
金額が高く感じても、毎年出ていたお金を見える化しただけなので落ち込む必要はありません。
残りを将来のためのお金に回す
賞与相当分5万5,000円から特別な支出の月割り3万5,000円を引くと、残りは2万円です。
2万円を将来のためのお金として積み立てると、年間24万円、3年で72万円になります。
生活費に使えるお金は22万円から5万5,000円を引いた16万5,000円となり、賞与がある世帯の月額目安と同じ水準になります。
| 用途 | 毎月 | 年間 |
|---|---|---|
| 生活費(家賃・食費・水道光熱費など) | 165,000円 | 1,980,000円 |
| 特別な支出の積立 | 35,000円 | 420,000円 |
| 将来のためのお金 | 20,000円 | 240,000円 |
| 合計 | 220,000円 | 2,640,000円 |
上の例の場合、年間手取り264万円に対して将来のためのお金は24万円で、貯蓄率は約9%です。
まずは無理のない水準から始めて、固定費の見直しなどで余裕が出たら比率を上げていくと続けられます。
ボーナスなしの家計管理では、3つの箱を毎月同じ順番で満たしていく習慣をつけましょう。
手書きでもアプリでも、記録の形式は続けられるものを選んでください。
特別な支出の項目を書き出す作業は、手元に記入欄があると一気に進みます。
当事務所のLINEでは、年間の特別な支出や毎月の予算を書き込めるシンプルな家計簿フォーマットをお渡ししています。
ボーナスなしの家計の「3つの箱」ごとに書き分けられる作りです。
ボーナスなしでも貯まる口座の分け方と自動化

箱の中身が決まっても、同じ口座に入っていると使ってしまいます。
ボーナスなしの家計管理では、お金の置き場所を分けることが仕組みの半分を占めます。
役割ごとに口座を分ける
目的別に口座を分ける場合は、次の組み合わせが基本です。
- 生活費の口座(給与の受け取り・家賃や光熱費の引き落とし)
- 特別な支出の口座(年払いや大型支出の積立用)
- 将来のためのお金の口座(原則引き出さない)
口座を分けるメリットは、残高を見るだけで使っていい金額がわかることです。
一方で、口座が増えると管理が煩雑になり、入出金の手数料がかかる場合もあります。
まずは3つ程度から始め、必要に応じて増やすと無理がありません。
給料日に動かす順番を固定する
ボーナスなしの家計は、毎月の入金が家計の全収入です。
給料日の動きを固定してしまうと家計が安定します。
- 特別な支出の積立・将来のためのお金の先取り
- 残った金額は当月の生活費
- 月末の残りは翌月に繰り越すか将来分へ上乗せ
金融機関の自動振替や積立サービスを使えば、手作業が減って楽です。
ただし自動化では残高不足で引き落としができないと、手数料や遅延が発生する場合があります。
設定直後の1〜2ヶ月は、入出金のタイミングを確認しておくと安心です。
なお、先に貯める金額を高く設定しすぎると、生活費が足りなくなって積立を取り崩す流れになりがちです。
ボーナスなしの家計では取り崩しの補填原資がないため、最初は控えめに設定してください。
3ヶ月ほど回してから調整すると長続きします。
ボーナスなしの家計管理で気をつけたい注意点

ボーナスなしの家計には、弱みだけでなく強みもあります。
両面を知っておけば、判断を誤らずに済むでしょう。
ボーナス払い・ボーナス併用払いは使わない
一番注意したいのは賞与を前提とした支払い方法です。
クレジットカードのボーナス一括払いや住宅ローンのボーナス併用返済は、賞与がない世帯では毎月の家計から払うことになります。
特に住宅ローンのボーナス併用返済は返済期間が長く、影響も長期にわたります。
賞与がない、あるいは賞与額が安定しない場合は、毎月均等の返済で組めるか先に確認してください。
後の負担を抑えられます。
ボーナスなしの家計にあるメリット
一方で、ボーナスなしの家計には次のメリットもあります。
- 毎月一定の収入による見通しの明確さ
- 賞与の増減に振り回されない安定感
- 臨時収入を貯蓄や投資に回せる余地
賞与は業績や会社の方針で変動し、支給されない年もあるでしょう。
収入が毎月ならされているボーナスなしの家計は、計画を立てるうえで扱いが楽な家計です。
収入減や想定外の支出に備える
ボーナスなしの家計はまとまった入金がないため、想定外の支出を吸収する余力をつくりにくい面があります。
病気やけが・転職に伴う収入減・家電や住宅設備の急な故障などに備えて、予備のお金を別に確保しておきましょう。
目安は生活費の3〜6ヶ月分で、確保しておけば積立を崩さずに対応できます。
また、将来のためのお金の置き場所や準備のやり方は、家族構成・収入の安定度・使う時期によって変わります。
元本が変動する方法には値下がりの可能性があるため、使う時期が近いお金と遠いお金を分けて考えることが必要です。
判断に迷う場合はご家庭の状況を前提にした相談をご検討ください。
よくある質問(FAQ)
ボーナスなしの家計管理では、毎月いくら貯めるのが目安ですか?
一律の正解はありませんが、手取りの1割前後から始めると続けられる傾向があります。
ボーナスなしの場合は1割の貯蓄とは別に、年払いや大型支出のための積立が必要です。
まず特別な支出の年間合計を月割りにして、残った範囲で貯蓄額を決める順番がおすすめです。
自営業やフリーランスで収入が毎月変わる場合はどうすればよいですか?
収入が変動する場合は、直近12ヶ月の入金額を合計して12で割ってください。
算出した金額から少し下げた金額を「基準の月収」として家計を組みましょう。
基準を超えた分は生活費に足さず、特別な支出の積立や納税資金に回すと、収入が落ちた月の影響を抑えられます。
ボーナスがある会社に転職すれば家計は楽になりますか?
賞与があると大型支出に充てられる一方、賞与は年収に占める割合が高いほど変動リスクも高まります。
賞与の有無だけで判断せず、年収の総額・毎月の手取り・勤務条件を合わせて比較することが必要です。
賞与がある場合も、受け取った後の振り分けを決めておかないと使い切ってしまうことは変わりません。
積立を始めたものの、途中で取り崩してしまいます。どうすればよいですか?
取り崩しが続く場合は、意志の問題ではなく設定金額が実態に合っていないことが多いです。
いったん積立額を下げ、3ヶ月続けられた水準を基準にし直してください。
引き出しにくい口座を使う、生活費の口座と通帳やアプリを分けるなど、手間を増やす工夫も効果的です。
まとめ:ボーナスなしの家計管理は年単位の設計で変わる
ボーナスなしの家計管理のポイントを整理します。
- 毎月の入金に混ざる「まとめて受け取るはずだったお金」
- 年間手取りを16で割って把握する賞与相当分
- 特別な支出の積立と将来のためのお金への振り分け
- 役割別の口座と給料日に動かす順番の固定
- ボーナス払い・併用返済の回避と予備資金の確保
賞与がないことは家計管理ができない理由にはなりません。
年単位で収入をとらえ、毎月の中に自分でボーナスをつくる設計に変えれば、同じ収入でも残るお金は変わります。
まずは今月の給与明細を手元に置いて、年間手取りを計算することから始めてみてください。
家計の整え方は世帯ごとに違います。
当事務所のLINEでは、家計簿フォーマットやライフイベント別の目安額ガイドなど、ご家庭の状況に合わせて選べる特典をまとめてお渡ししています。
何から手をつけるか迷っている方は、必要なものだけ受け取っていただければ十分です。
なお、本記事は一般的な情報提供を目的としています。
個別の税務・法律に関する判断や具体的な金融商品の選択については、各分野の専門家にご確認ください。